昨日、「エロイカより愛をこめて」の作品紹介をしましたが、青池保子は多作の人なので、他にもおススメ作品はたくさんあります。
この方の作品は、絵も話も構成がしっかりしており、何を読んでもハズレはないのですが、個人的なおススメ作品5作を紹介します。
エロイカより愛をこめて
NATOの情報部員・エーベルバッハ少佐と、大泥棒・エロイカとの痛快スパイアクション・コメディー?
(Amazon作品紹介より)
エロイカ以外にもと言っておきながら、まずこれ!という構成、なんとなく私の中ではテンプレ化してきました。
やっぱり、代表作はどうしても筆頭でおススメしたい作品になります。
この作品に対する個人的に熱い思い入れは昨日の記事で散々書き尽くしましたので、良ければそちらをご覧ください。
少女漫画に対する思い込みを覆す、重厚で痛快なスパイ+怪盗コメディです(何言ってるのかよく分かりません)
アルカサルー王城ー
14世紀、スペインに生まれたドン・ペドロ一世。彼の行く手には波瀾の一生が待ちうける!!
(Amazon作品紹介より)
Amazonの作品紹介が雑なのが気になりますが、それはおいておくとして、この作品は、作品紹介の通り、現在のスペインに実在した14世紀のカスティリア王ペドロ一世の生涯を描いた作品です。
物語は概ね史実通りに進むのですが、主人公ペドロ一世を強く冷徹な意思を持ちながらもマリアを一途に愛する男に、宿敵エンリケは庶子ゆえに嫡子ペドロに対する歪んだ想いをため込むなど、青池保子によってドラマチックに色付けされたキャラクターたちが非常に魅力的です。
また、ペドロの最初の王妃ブランシュ姫のマルティンに対する恋心など、フィクションのエッセンスも非常に上手く、単なる歴史漫画以上にグイグイ引き込まれて読めます。
この作品、ドンペドロの絶頂期までを1994年まで連載した後、13年間の沈黙を経て、2007年に全200ページの大長編で一気に完結しました。
前者はコミックス13巻の94ページまでであり、その後の200ページ分は同じ13巻の97ページ以降です。
この200ページは、それまでの12巻強とは話の進み方も描かれ方もだいぶ違い、どうしても説明が多くなっているという特徴がありますが、とにかくこの大長編をペドロ一世の死後の名誉回復まで描き切ったところに価値があります。
非常に読み応えのある作品ですので、是非読んでみてください。
なお、私はこれを読んで(これだけが理由ではないですが)、セビリアに行って、ペドロ一世の建てたアルカサルを見てきました。
エル・アルコンー鷹ー
スペインこそが、世界を征服する――! 七つの海を征服ためには手段を選ばない男、ティリアン。大きな野望を抱いた波乱の前半生を描く!!
(Amazon作品紹介より)
この作品は、「七つの海七つの空」で敵役として描かれたティリアンが主役を食ってしまったため、スピンオフ作品として、「七つの海七つの空」以前のティリアンの前半生を描いています。
「七つの海七つの空」を読むと分かるのですが、青池保子もティリアンに惚れたと言っているとおり、非常に魅力的なキャラクターになっています。
物語は正義であるルミナス・レッド・ベネディクトが勝つのですが、正義の側のレッドの人物造形の薄さに比べ、ティリアンの「惚れたら破滅するだろうな」という魅力がたまりません。
「エル・アルコンー鷹ー」はそんなティリアンの複雑な背景や、文字通り何人もの女を手玉にとっておきながら、用済みになると始末する、自分の欲望に忠実なティリアンの魅力が全開です。
なお、ルミナス・レッド・ベネディクトは「エロイカより愛をこめて」の伯爵の祖先、ティリアンは少佐の祖先という設定になっており、作中でそれが直接語られることはないのですが、エロイカファンにはうれしい設定です。なお、「アルカサルー王城ー」のペドロ一世はティリアンの先祖ということになっています。
さらに、少佐がかぼちゃ呼ばわりする「紫を着る男」はティリアンを描いた肖像画という設定になっています。
修道士ファルコ
14世紀後半のスペイン、ファルコ(鷹)と呼ばれたナバーラの剣客がいた。彼は闘いに明け暮れた日々を悔い改め、修道士となるが…!? カスティリア王ドン・ペドロとの出会いからリリエンタール修道院の個性的な仲間達との友情、難事件でのファルコの活躍に刮目!!
(Amazon作品紹介より)
ジャンルとしては、中世ドイツの修道院を舞台にしたミステリーでしょうか。貴族のお家争いに巻き込まれたり、修道院の乗っ取りを阻止したり、色々な事件に巻き込まれて解決していく話です。
主人公のファルコは優れた剣士でありながら、闘いに明け暮れた日々を悔い改め修道士となった人物。ただし、頭頂部に他の修道士を惑わす原因になりかねない痣があるため、トンスラ(中世カトリック教会の修道士の一般的な髪型で頭頂部と側頭部から後頭部にかけて鉢巻状に剃る)にすることを禁止されているという、主人公をハゲにするわけにいかなかったからか、かなり強引な設定になっています。
この辺の強引さを真面目に押し切るところが、青池作品の面白いところです。
しかも、主人公は確かにショートヘアであるものの、それ以外の修道僧は全員トンスラなので、修道院の場面が多いこの作品では画面のほとんどがハゲということになり、とても少女漫画とは思えない画面構成になります。
が、それすら強引に読ませてしまうのが、青池作品のすごいところです。
この作品は、物語冒頭他、何度かペドロ一世が出てくるなど、「アルカサルー王城ー」のスピンオフ作品的側面もあり、その点からもファンにはうれしい作品となっています。
現在、作者が連載している「ケルン市警オド」はこの作品の登場人物オドの修道院に入る前の話で、修道院でも俗世のクセが抜けず、生き生きと捜査をするオドの元々の姿を見ることができます。
サラディンの日
12世紀末、イスラムから現れた反十字軍の英雄・サラディン。彼らから聖地エルサレムを奪回するため、騎士団たちは戦意に燃えている。そんな、中テンプル騎士団のユーグ、ヨハネ騎士団のパオロ、エルサレム王国のニコラは、たった3人へガザへと派遣されることとなった。俗世を捨て、清貧・貞潔を誓った修道騎士たちの、真の三勇士への旅が始まるー!! 青池保子が描く、中世アドベンチャーロマンの傑作!!
(Amazon作品紹介より)
この作品は、それぞれ100ページからなる「サラディンの日」「獅子心王リチャード」と、全く別ジャンルの読み切り「カルタゴ幻想」を収録しています。
うち、タイトルに関連するのは、「サラディンの日」と「獅子心王リチャード」なのですが、まず、主要3キャラクターのバランスが良いです。
3人とも修道騎士なのですが、勇敢だが、美人の叔母という俗世だけは対処できないユーグと、弁が立ち、騎士団員なのにどこか飄々として俗世に柔軟な反応をするパオロ、高潔な堅物二コラという、全くキャラの違う3人がぶつかりあいながらも任務を遂行していく話です。
基本突っ込まれ役のユーグが五感が異常に鋭く仲間の危機を何度も救ったり、二コラは堅物のわりに船酔いが弱点だったり、ユーグの過酷な試練に付き合って参加したりと、基本的な性格とのギャップも魅力です。
青池保子おススメ作品 まとめ
青池保子のおススメ作品、いかがでしたでしょうか?
本文中で紹介してるスピンオフ入れたらほぼ全部じゃないかと思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、実のところその通りです。
それだけ青池保子の作品は安定しており、どれも一定以上の水準としておススメすることができます。
個人的な好みとして、ここでは挙げていない「イブの息子たち」のドタバタノリだけがあまり得意ではないのですが、最近には見ない、かなりハッチャけたギャグ漫画になっていますので、話のタネに一度これも読んでみると良いかも知れません。
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