【3分で分かる世界名作文学】鏡の国のアリス

書評

昨日に引き続き、誰もがタイトルは知っているけれど、意外と原作は読んだことがない世界の名作文学を、3分で分かるように紹介します。

 

今日は昨日の「不思議の国のアリス」の続編「鏡の国のアリス」です。

紹介内容としては、「不思議の国のアリス」と結構被ります。

 

以下ネタバレを含みますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

 

「鏡の国のアリス」あらすじ(ネタバレ含む)

 

「鏡の国のアリス」は伏線や前後関係がなく、奇妙な出来事が次から次へと起こる構成です。よって、章順に淡々と描いた方が分かると思うのでそうします。

 

(Wikipediaより)

鏡の向こうの国を空想していたアリスは、実際に鏡をくぐりぬけて鏡の国に入り込んでしまう。鏡の国の暖炉の前にはチェスの駒が動き回っているが、どうやらアリスの姿が見えないらしい。アリスは駒を持ち上げたりして彼らを驚かせる。しばらくしてアリスは戸外に出ていく。(第1章 鏡の家)

 

 

アリスは丘に登ろうとするが、突然道がよじれてアリスを元の場所に戻してしまう。しばらく行くと、言葉を話すオニユリやバラ、ヒナギクが植えられている花壇に着く。花壇で赤のクイーンに会ったアリスは、一緒に丘に向かい、この世界がチェス盤になっており、大きなチェスの試合をしていることに気づく。赤のクイーンの助言を受け、アリスは自分も駒として参加する。(第2章 しゃべる花々のお庭)

 

白のポーンとなったアリスはいつのまにか列車に乗り込み、白い紙の服を着た紳士、ヤギ、カブトムシと一緒になる。やはり知らないうちに列車の外に出たアリスは巨大な蚊と一緒になり、彼から鏡の国の様々な虫を紹介される。一人になったアリスは物の名前がない森に入り、子ジカと一緒になるが、森を抜けた途端「人間」を思い出した子ジカは逃げて行ってしまう。(第3章 鏡の国の虫)

 

(Wikipediaより)

再び一人になったアリスは、マザーグースの双子のトゥィードルダムとトゥィードルディに出会う。二人は眠っている赤のキングを見せ、アリスは赤のキングの夢の中の人物に過ぎないと教える。そして、壊れたガラガラをめぐって決闘の準備を始めるが、とんできた巨大なカラスに恐れをなして逃げていってしまう。(第4章 トゥィードルダムとトゥィードルディ)

 

 

 

そこにクイーンのショールが飛ばされてくる。アリスはやってきた白のクイーンから、未来のことを記憶しているという不条理な話を聞かされる。しかし、小川を越えようとしたとき、一緒にいたクイーンは突然ヒツジに姿を変え、雑貨店の店内に移動していた。不思議な店内では、アリスが棚のあるものを見ようとすると、決まってそこだけ空っぽになる。アリスはまたしても突然ヒツジを乗せてボートを漕いでおり、気づいたら店内に戻っていた。アリスは卵を買うことにするが、卵はなぜかどんどん遠ざかっていく。(第5章 ウールと水)

 

その卵はどんどん大きくなって塀の上に座り、マザー・グースのハンプティ・ダンプティに変わる。彼は高慢な態度で自慢話をし、アリスは不愉快極まりない思いを抱いて彼のもとを去る。(第6章 ハンプティ・ダンプティ)

 

直後、森中が大きく揺れ、白のキングの軍勢が現れる。アリスと白のキングは、マザー・グースの唄の通りに王冠をめぐって争っているライオンとユニコーンを見物する。ライオンとユニコーンは今日の戦いはこれまでとして、アリスは干しブドウ入りケーキをみんなに配る役目を言いつかるが、大きな太鼓の音が響き、アリスはまた別の場所に移動する(第7章 ライオンとユニコーン)

 

音が止むと赤のナイトと白のナイトがやってきて、どちらがアリスを捕虜にするかをめぐって決闘をはじめる。勝利した白のナイトはアリスを森のはしまで送ろうと申し出、自分の珍妙な発明を披露し、長い歌を送ってアリスと別れる。(第8章 「これは、せっしゃの発明でござる」)

 

(Wikipediaより)

ついに八つ目のますに着いたアリスは、自分の頭に黄金の王冠が乗っており、女王になれたことに気づく。いつの間にか自分の両脇に赤のクイーンと白のクイーンが座っており、二人は立て続けに不条理な質問をする。二人が眠るとアーチが表れ、アリスのためのパーティが始まった。しかし、運ばれる料理は紹介されるだけで片付けられてしまい、アリスは何も食べることができない。アリスはスピーチを始めようとすると、その場のロウソクや食器、女王たちが変形し始め、大混乱に陥る。癇癪をおこしたアリスは赤のクイーンをつかまえ、「ゆさぶって、子ネコにしてやる!」と叫ぶ。(第9章 女王アリス)

 

アリスが赤のクイーンをゆさぶると、クイーンはどんどん変形し、子ネコに変わる。(第10章 ゆさぶって/第11章 目が覚めて)

 

アリスは夢を見ていたらしい。子ネコに対して赤のクイーンなのかと問いかける。自分の夢に赤のキングが出てきたが、赤のキングの夢にも自分が出てきたはずで、どちらの夢だったのかと自問して物語は終わる。(第12章 夢を見たのはどっち?)

 

「鏡の国のアリス」みどころ

 

チェスが分からないと分からない?

 

「不思議の国のアリス」もかなりシュールな物語でしたが、「鏡の国のアリス」は輪をかけて分かりにくい話だと思います。

 

舞台となっている鏡の国をチェス盤に見立て、チェスの試合によって物語が進む構成にしているため、突然登場人物が消えたり、アリスが場面を移動したりと、初めて読んだときは、ずいぶんとっちらかった話だなと思いました。

 

(Wikipediaより)

この話の作者ルイスが、チェスに詳しくない読者のために作品中の駒の動きを解説した棋譜を残しており、後述する河合祥一郎の日本語版には、巻末にそれらの棋譜を交えて訳者解説しています

 

これを見ると、作品中の移動の唐突さの理由が分かるので、訳者解説を片手に本編を読むのをおススメします。

 

 

 

第1作に比べるとやはり劣る?

 

「鏡の国のアリス」でも、次から次へと不思議な現象がアリスに襲い掛かり、念願の女王になったところで何かをする前に全てが夢オチという、どこぞの打ち切り漫画のような最後で締めくくります。

 

夢オチ、ルイスのお気に入りだったんでしょうか?

当時の感覚からすると斬新だったのかどうかは分かりませんが、現代の感覚からすると、二作続けて夢オチだと、「この漫画家、スリーアウトを待たずにイエローカード2枚で退場かなー」と思うところです。

 

また、言葉遊びと韻の魅力はたっぷりですが、キャラクター造形や話の展開はやはり第一作に比べると落ちるかなという印象です。

一作目の成功に気をよくして続編書いてみたら、「続編ない方が良かった」と言われる、ヒット漫画の失敗続編みたいなものでしょうか。

実際、全く失敗とまで言うほどではないのですが、どうしても一作目に比べると及ばない印象です。

 

マザーグースの引用

 

「不思議の国のアリス」では、「ハートの女王」「帽子屋」「チェシャネコ」という強烈なキャラクターがいましたが、「鏡の国のアリス」にはそのような登場人物はいません。

 

本書で特徴的なのは、マザーグースで有名なキャラクターが出てくるところでしょうか。有名と言っていますが、アリスで引用されたために有名になったキャラクターや詩もありますので、昔から有名だったとは限らないものもあります。

 

(Wikipediaより)

一番有名なのは、やはりなんといっても第6章の「ハンプティ・ダンプティ」でしょう。卵を擬人化した姿で描いたキャラクターとして、マザーグースの中でも一番知られたキャラクターなのではないでしょうか。

 

第4章の「トゥイードルダムとトゥイードルディー」もマザーグースから引用した双子です。双子が出てくる箇所は、マザーグースの詩をそのまま物語化しており、決闘を始めた後、カラスを怖がって逃げ出すところは完全に一致しています。挿絵の双子はハンプティ・ダンプティのような体型をしており、私は、初めて読んだとき、ハンプティ・ダンプティって双子だったのかと思った記憶があります。

 

第7章の「ライオンとユニコーン」もマザーグースからの引用です。王冠をめぐって争うライオンとユニコーンが、ケーキを与えられて、太鼓で追い出されるという、ほぼ詩の通りに物語も展開します。

 

「ハンプティ・ダンプティ」や双子は結構な強烈さだと思いますが、個人的には、やはり「不思議の国のアリス」に比べるとキャラクターの魅力には劣るかなという気はします。

 

最大の魅力は言葉遊びと韻とリズム

 

「不思議の国のアリス」のときも、言葉遊びと韻(ライム)については触れましたが、「鏡の国のアリス」もこの点の魅力はたっぷりです。

 

引用や他の詩のパロディも多い本作ですが、第1章の「ジャバウォックの詩」はルイスのオリジナルとして、ナンセンス詩の傑作として知られています。

あらすじでは触れていませんが、内容は「森に棲む怪物ジャバウォックを騎士が討伐する」という筋で、ここだけ全く異なる物語を読んでいるように感じます。

 

素晴らしいことに、これら難解な詩についても、言葉遊びと韻とリズムを最大限に活かした最強の翻訳が出ており、「鏡の国のアリス」もその一冊があれば事足ります。

 

日本語翻訳は河合祥一郎の角川文庫版がアリス翻訳決定版

 

「不思議の国のアリス」同様、「鏡の国のアリス」の言葉遊びと韻とリズムは、原文で読まなければ良さは分からないと長らく言われていました。

 

しかし、150年以上前の古い英語であることに加え、詩として特殊な書かれ方をした英語は、一般的な日本人には難しく、だとすると並み大抵のことでは原文の良さは分からないことになります。

 

が、2010年に刊行された河合祥一郎版でこの問題は全て解決されました。

キャロルが一番拘った韻を、見事なまでに日本語で韻を踏んだ翻訳を実現しています。

 

あまりに気になったので、英語原文を買って比較してみたのですが(英語が古くて難しいので、完全に理解できたわけではないのですが)、言葉遊び、韻、リズムの全てを日本語で実現すべく、かつ、原作の雰囲気を損なわない程度に適度なアレンジを加えた、素晴らしい翻訳となっています。

 

翻訳者の河合祥一郎氏は、シェイクスピアを専門とする東大の教授ですが、学者先生にありがちな小難しさは一切ありません。

 

アリスを読むなら河合祥一郎版以外はないと断言します。

 

Kindle版だけですが、「不思議の国のアリス」との合本版もあるので、どうせ両方とも読むかなという方はこちらがおススメです。

 

「鏡の国のアリス」まとめ

 

というわけで、「鏡の国のアリス」いかがでしたでしょうか?

 

とりあえず、アリスの原作を読んだことがない人は、まず「不思議の国のアリス」を河合祥一郎版で読んでみてください、「鏡の国のアリス」はその後に訳者のチェス解説片手に読んでみてください、という感じでしょうか。

 

ジワジワ来る面白さがあります。

 

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コメント

  1. […] 続編の「鏡の国のアリス」もありますが、話自体は1作ずつ完結しています。 […]

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