【3分で分かる世界名作文学】ジェーン・エア

書評

昨日に引き続き、誰もがタイトルは知っているけれど、意外と原作は読んだことがない世界の名作文学を、3分で分かるように紹介します。

 

昨日はエミリー・ブロンデの名作「嵐が丘」を取り上げましたが、今日は、エミリーの姉シャーロットによる「ジェーン・エア」です。

 

以下ネタバレを含みますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

 

「ジェーン・エア」あらすじ(ネタバレ含む)

 

孤児となったジェーン・エアは、親類から厄介者扱いされながら育つ。伯母に疎まれたジェーンは、9歳になって寄宿学校ローウッド学院に送られるが、そこで心優しい学友ヘレン・バーンズと出会う。ジェーンは良き学友としてヘレンと仲良くなり、また彼女の信仰心の深さと心優しい性格に尊敬の念を抱くようになるが、学院ではチフスが大流行し、ヘレンは結核にかかって死亡してしまう。

 

ローウッドを卒業し、2年間教師として勤めた後、ジェーンはソーンフィールド邸で家庭教師として雇われる。上流階級の当主エドワード・ロチェスターと、家庭教師のジェーンでは身分が合わないが、二人は惹かれあうようになり、結婚を申し込まれる。しかし、結婚当日になって、エドワードには狂人の妻がいることが判明する。重婚は当時の法律では厳罰に値する行為であり、また、当時のキリスト教の価値観では、どんな事情であろうと考えられることではなかった。深く悩んだジェーンは、黙ってソォーンフィールドを去る。

 

行き倒れになりかけたところを牧師セント・ジョンと妹たちに助けられ、家に身を寄せる。その後、ジョンたちがジェーンのいとこであることが判明し、1年を共に過ごす。穏やかな日々を過ごしていたが、ジョンから宣教師としてインドに行くことを告げられ、妻として同行することを求められる。ジョンに恋愛感情はなかったが、信仰心から申し出を受けようとしたとき、嵐に紛れて自分を呼ぶエドワードの声を聞き、家を出る。

 

その後、ソーンフィールドでは屋敷が火事になって、ロチェスター夫人が亡くなっていたことが判明する。エドワード自身も片腕を失い、盲目になっていた。ジェーンは何もかも失ったエドワードのもとに戻り、共に生きることを誓って、静かに結婚式を挙げた。

 

「ジェーン・エア」みどころ

 

発表当時は画期的な作品として評価された

 

今でこそ、妹エミリーの書いた「嵐が丘」の方が圧倒的に有名ですが、発表当時は「ジェーン・エア」の方が高評価でした。

 

男性優位でガチガチの階級社会であったヴィクトリア時代において、当時芽生えつつあった男女平等意識を描き、自由恋愛を貫く点は、世相とマッチしたという世間的な追い風も受け、文学界では斬新かつ画期的な作品として捉えられたものと考えられます。

 

当時に比べると、問題はあれど、はるかに男女平等意識の進んだ現代人が、その点に新しさを感じることができないのは仕方のないことだと言えましょう。

 

作者の実体験に基づいて描かれたエピソード

 

本作の前半に出てくるローウッド学院は、シャーロットが実際に通っていたカウアン・ブリッジ校がモデルとされています。この学校は衛生管理に問題があったようで、実際にチフス患者も出しています。

作中、ジェーンの親友ヘレンが亡くなりますが、ヘレンはシャーロットの姉マリアをモデルとして描かれており、実際、マリアともう一人の姉エリザベスはカウアン・ブリッジ校で肺炎にかかり亡くなりました。

 

ジェーンとエドワードの関係もシャーロットの経験が反映されていると言われています。

作者シャーロットは、ベルギーのエジェ寄宿学校に留学しますが、現地でエジェという教師に出会い恋に落ちるも、エジェが既婚者だったために失恋します。

エドワードと結婚直前に妻の存在が明らかになり、悩んだジェーンがエドワードの元を去る流れは、失恋体験を小説化する際にアレンジしたものと考えられますし、妻が死んだ後、全てを失ったエドワードの元に戻って来て結婚する流れは、エジェへの敵わぬ恋心を小説内で昇華させたと捉えることもできます。

 

現代の感覚で考えても比較的分かり易いキャラクター造形

 

妹エミリーの「嵐が丘」の人物造形は、倫理観的にもどうなのよと思ってしまうものであるのに対し、「ジェーン・エア」はジェーンの成長物語であり、実在の人物をモデルにしているケースも多いため、登場人物は比較的良識的で分かり易くなっています。

 

主人公ジェーンは、孤児として疎んじられて育ったものの、学院で心優しい先生や学友に恵まれたこともあり、向上心があり、良識的な心の強い女性として描かれています。

まぁ、主人にあたる上流階級のエドワードと恋に落ちてしまうあたりは、ヴィクトリア朝時代の価値観からすると良識的かどうかは疑問符が付くかも知れませんが、ヴィクトリア時代を知らずイギリス人でもない我々には想像するしかできないので、スルーすることにします。

あと、キリスト教的価値観(重婚の禁忌、信仰心から結婚しようとする、など)に苦悩する様は、キリスト教を文化のベースに持たない日本人には分かりにくいかも知れません。少なくとも私には分かりません。

まぁ、重婚はキリスト教じゃなくても現代でもアウトですが、苦悩する理由がキリスト教的で分かりにくいという意味です。

 

エドワードは家庭教師を始めたときに18歳だったジェーンよりかなり年上の中年男性であり、父親のような包容力を備えた、知性ある尊敬できる人物として描かれています。

そんな尊敬できる人物が、妻を閉じ込めたり、遥か年下のジェーンと恋に落ちたり、妻がいることを黙ってジェーンと結婚しようとするのは良いのか、という疑問はありつつ、この辺もキリスト教的に苦悩しているので、とりあえずこの点もスルーすることにします。

 

他にも学友ヘレンなどは、こんな出来た子供、本当に実在するんだろうかと思いたくなってしまうような寛大さですが、彼女はシャーロットの実姉マリアをモデルにしているということで、よく出来た子供だったのかも知れません。亡くなった時10歳ですが。

 

という具合に、ツッコミどころは満載ではあるものの、まぁまぁ分かり易い造形になっているかと思います。

 

日本語翻訳は河島弘美の岩波書店版がおススメ

 

「ジェーン・エア」も、「嵐が丘」同様、約200年前に書かれた作品であり、英語は古いものです。

 

古い作品なので、昔から良訳本がたくさんあります。近年、新訳が何冊も出ていますが、私がおススメするのは、「嵐が丘」と同じ河島弘美氏による岩波書店版です。

言葉遣いは現代語で分かり易く、変な癖もなく、非常に読みやすい丁寧な翻訳だと思います。

 

 

「ジェーン・エア」は、翻訳の大家大久保康雄氏による1953年の新潮文庫版も未だ入手可能であり、さすがと思わせる質です。

ただし、日本語の表現はさすがに古いので、現代人感覚の読みやすさを重視するなら、やはり、河島弘美版をおススメします。

 

「ジェーン・エア」まとめ

 

というわけで、「ジェーン・エア」いかがでしたでしょうか?

 

「嵐が丘」に比べるとはるかに嵐のない作品であり、ドラマチックさには欠けますが、その分、分かり易い作品なのではないかと思います。

個人的には「嵐が丘」の読後感の強烈さが忘れられないのですが、私の周りには「ジェーン・エア」の方が好きという人もたくさんいます。

 

是非読んでみてください!

 

あわせて読みたい

妹エミリー・ブロンデの「嵐が丘」についても書きましたのでご覧ください。

【3分で分かる世界名作文学】嵐が丘
普段、本を読まない人でも、エミリー・ブロンデの名作「嵐が丘」の名前を聞いたことが無い人は少ないでしょう。 米英だけでこれまでに4回映画化されており、フランスや日本でもベースにした映画やテレビドラマが作られ、舞台も何度も上演され...

コメント

  1. […] エミリーの姉シャーロット・ブロンデの「ジェーン・エア」は、作者の子供の頃の寄宿舎での経験などをベースにしていることが分かっています。 […]

  2. […] 【3分で分かる世界名作文学】ジェーン・エア […]

タイトルとURLをコピーしました