【3分で分かる世界名作文学】女の一生(モーパッサン)

書評

誰もがタイトルは知っているけれど、意外と原作は読んだことがない世界の名作文学を、3分で分かるように紹介します。

 

今日はモーパッサンの「女の一生」です。

 

以下ネタバレを含みますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

 

「女の一生」あらすじ(ネタバレ含む)

 

男爵の一人娘として何不自由なく育ったジャンヌは、閉鎖的な修道院を出て出会った美青年ジュリアンと恋に落ち結婚する。善良で優しい両親と美しい夫に囲まれ、彼女の人生は希望に満ちたものであったはずだが、現実は彼女を翻弄する。

 

修道院で純粋培養された彼女は、男女のことに疎く、夫から求められる愛の行為を嫌悪する。さらに、乳兄弟の女中ロザリが男の子を産み、その父親が夫であったことが発覚する。ロザリは持参金付きで屋敷を追い出されるが、最初、子供の父親が自分であることを認めようとせず、持参金も渋る夫にジャンヌは完全に幻滅し、しばらくして産まれた自分の息子ポールを溺愛するようになる。

 

ジュリアンはフルヴィル伯爵夫人と不倫関係になるが、ジャンヌは見て見ぬふりをする。同じ時期、貞淑な妻と思っていた母が、父親の親友と不倫していたことを知り、ジャンヌは傷つく。

 

フルヴィル伯爵が二人の不倫を知り、逢引に使っていた小屋を崖から突き落としたため、ジュリアンは亡くなる。ジャンヌはますます息子を溺愛し、やがて息子が学校に通うようになると、毎週のように学校に息子を訪ね、学校側を困惑させる。

 

やがてポールは成長し、家に寄り付かなくなり、知り合った女と駆け落ち同然に姿を消し、ジャンヌには金の無心の手紙しか寄こさなくなるが、ジャンヌは息子のためとひたすら金を送り続ける。

 

金も尽きてきたころ、ロザリが帰ってくる。ロザリの助けで、ジャンヌは小さな家に移り、ポールにはもう金は送れないと伝える。ポールから女が女の子を産んだものの死にかけているという連絡が来る。ロザリはポールに会いに行き、生まれた子供を連れて帰り、翌日にポールも来ることをジャンヌに伝えて物語は終わる。

 

「女の一生」みどころ

 

現代の感覚ではだいぶ病んでる話

 

私はこの話については全くの予備知識なしで読んだのですが、ずいぶん病んだ話だなぁと思いました。

 

あらすじをもう少し身も蓋もなく書くと、「両親に溺愛され不自由もないけど何もできないジャンヌが、見た目だけのケチな男と結婚し、夫婦関係が冷え、息子を溺愛し依存した結果、何もできないダメ息子に育ててしまい、金の無心ばかりされるという話」です。

 

とくに主人公でもあるジャンヌは、息子の学校に毎日のように押しかけるなど、今の感覚では完全にモンスターペアレントですが、そもそも、父である男爵が無理やり決めるまでは、自分が寂しいからと息子を学校に行かせるのに反対したり、息子を愛していると見せかけて、その実自分のことしか考えていない、かなりヤバいタイプの母親です。姑がこれだったら、絶対上手くいかないパターンですね。

 

ジャンヌの両親である男爵夫妻も善良ではあり、娘のことを考えてもいるのですが、肝心のところが抜けており、娘はサバイバル能力というものが完全に欠如しています。

両親は娘を第一に考えているとしても、人間全部がそうではないんだよということを娘に教えてあげなかったことが、この両親の一番の失敗でしょう。

 

なお、作者のモーパッサンは、最後には精神を患って一生を終えており、このジャンヌの偏執狂ぶりも危うい精神状態で書かれたのだとすると、非常に納得です。

 

小説原題は「Une vie (ある一生)」

 

モーパッサンの原題は「Une Vie」で、直訳すると「ある一生」です。

 

これが「女の一生」という邦題になったのは、英語版のタイトルが「A woman’s life」とされた時期があり、昔の日本語訳は仏語版ではなく、英語版を訳していたためではないかという説が濃厚です。

たしかに、主人公ジャンヌの人生がメインですので、「女の一生」でもおかしくないのですが、個人的には「ある一生」の方がしっくりきます。

 

というのも、話としては、先述の通り、かなり病んでいるのですが、読んでいると「こういう人いるな」「こういうことあるな」というのが頻繁に出てくるため、特定の誰かの人生ではなく、「よくありそうな誰かの人生」という意味で「ある一生」の方がはまる気がします。

 

主題の深読み

 

この物語は、ポールの赤ん坊を連れて帰ってきたロザリが「ねえ、ジャンヌ様、人生ってのは、皆が思うほど良いものでも、悪いものでもないんですね」というシーンで終わっています。

 

ロザリは、夢見がちなジャンヌとは好対照で、現実的な性格として描かれています。まぁ、女中で、一日中考え事をする間もなく働いていたら、現実的なことしか考えられないと思いますが。

 

しかしながら、このセリフは、親や力関係、キリスト教的考え方に従って生きるしかなかった当時の考え方かなという印象です。

 

現代なら、ジュリアンのような夫は結構な大多数の人が離婚を選ぶのではないでしょうか。

そして、ジャンヌも、現代の女性のように本人が働くか、働かないにしても、当時の貴族のように何もしなくても生活していけた時代とは異なり、何かと忙しい現代人女性であれば、時間を持て余して実の息子にストーカーするような事態にはならなかったのではないでしょうか。

 

と考えると、どちらかというと、私にとっては、自分の幸せは人に依存せず自分で選ぶべき、というメッセージに読めてきます。

先述の通り、この話が書かれた時代は自分で選べる時代ではないので、当時の価値観の完全否定になってしまいますが、現代ではそういうメッセージの方がしっくり来るのではないかと思います。

 

日本語翻訳版おススメ

 

「女の一生」は、岩波、新潮、光文社から、比較的新しい翻訳版が出ており、うち、新潮と光文社については、Kindle版があります。

 

私が読もうと思ったとき、光文社版がAmazon Primeの読み放題対象になっていたので、迷うことなく、こちらを選びました。

通常、読み放題対象になっている作品は、かなり訳が古いものか、あまり出来が良くなく売れ筋ではないものという印象だったので、この光文社版は訳も淡々とした現代語で読みやすく、なぜ読み放題対象になったのかが謎です。

 

他の版と比べてないので優劣はつけられませんが、読み放題でここまでのクオリティのものが読めるのであれば、光文社版は全く問題なくおススメです。

 

 

「女の一生」まとめ

 

「女の一生」いかがでしたでしょうか。

 

久々にツッコミどころ満載な小説を読みましたが、一方で、話自体は淡々として意外と面白く、思っていたよりぐいぐい読まされます。

 

話も普通に面白い、加えて、ツッコミどころの粗探しをするのも面白い、というちょっと特殊な楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか。

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