普段、推理小説を読まない人でも、アガサ・クリスティの名前を聞いたことがない人はいないでしょう。
イギリスが生んだ「ミステリーの女王」。
その著作は、長編66作、中短編156作と多作で、1920年のデビューから100年近く経った今でも、ほとんどの作品が未だに世界中で読まれ、時には映画化し、全世界の発行部数は10億部を超えるという驚異的なベストセラー作家です。
昨日の記事では、有名作を除く個人的なおススメ作品5作を紹介しました。(記事はこちら)
が、やはり、クリスティを語るなら、有名作は外せない!ということで、今日は特に有名な4作「そして誰もいなくなった」「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」について取り上げたいと思います。
そして誰もいなくなった
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作! (作品紹介より)
タイトル通りの内容です。孤島に集められた一見なんの関係もない10人が、童謡に見立てられて一人ずつ殺されてゆき、最後には誰もいなくなります。
ミステリーでいう、「クローズド・サークル」「見立て殺人」の代表的な作品と言われています。
この作品を初めて小学生で読んだときの衝撃と言ったらなかった!今でこそ、オマージュのような作品がいくつもありますが、できればこの作品を読んでから触れることをお勧めします。
オリエント急行の殺人
真冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……ミステリの魅力が詰まった永遠の名作。 (作品紹介より)
この作品の最大の見どころはなんと言っても犯人!そして、そこに至るアリバイ崩しです。
舞台となる場所がオリエント急行の中に固定されるため、調査と謎解きの説明でほぼ終わる作品ですが、ポアロの思考に沿った形で話が進みます。パズルのようにはまったアリバイ工作を、ほんのささいなことからガラガラと突き崩していく様が見事です。
これは、是非予備知識のない状態で読んで頂きたい。一度、犯人を知ってしまうと、魅力半減です。
というわけで、これ以上、何を書いてもネタバレになりそうなので、詳しくは書かないことにします。
アクロイド殺し
名士アクロイドが刺殺されているのが発見された。シェパード医師は警察の調査を克明に記録しようとしたが、事件は迷宮入りの様相を呈しはじめた。しかし、村に住む風変わりな男が名探偵ポアロであることが判明し、局面は新たな展開を見せる。ミステリ界に大きな波紋を投じた名作。 (作品紹介より)
本作で用いられているトリックが、フェアかアンフェアかという論争が巻き起こった問題作です。ポアロによって犯人が暴かれる瞬間の衝撃といったらないです。
これもまた予備知識のない状態で、しかも映像ではなく本で読んで頂きたい作品です。本で読んでこそ映えるトリックです。
ABC殺人事件
ポアロのもとに届いた予告状のとおり、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく、第二、第三の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され……。 (作品紹介より)
「見立て殺人」の有名な作品です。かつ、見立てることがトリックにもなっています。
一見、無関係に見える事件のつながりが分かるときの展開や、最後にミスリードが完全にひっくり返る瞬間が面白いです。
駄作もあるよ(主観に基づく)
クリスティの作品はだいたいどれも水準以上だと思うのですが、中にはこれはちょっと、、、(ヒドイ)というものもあります。
ビッグ4
ポアロの家に倒れ込んできた男はうわの空で数字の4を書くばかり——国際犯罪組織〈ビッグ4〉と名探偵の対決はこうして幕を開けた。証人を抹殺し決して正体をあらわさない悪事の天才四人を追って、大陸へ渡ったポアロを恐るべき凶手が待ちうけていた。波瀾万丈の冒険と驚愕の結末! (作品紹介より)
ポアロが国際的犯罪組織と戦う話です。
たくさんの短編を組み合わせて一作にしたそうで、小さな事件の謎がどんどん解かれていく展開は面白いのですが、肝心の組織の話がナンバーフォー以外はほとんど存在感もなく、変な組織の話にしなくても良かったんじゃないかなーというのが率直な感想です。
クリスティでもこういうことはあるんだなということで、様々な意味で実験的作品です。
複数の時計
秘書・タイプ引受所から派遣されたタイピストのシェイラは、依頼人の家を訪れた。無数に時計が置いてある不思議な部屋で待っていると、柱時計が三時を告げた。その時シェイラは恐ろしいものを発見した。ソファの横に男性の惨殺体が横たわっていたのだ……死体を囲む時計の謎にポアロが挑む。 (作品紹介より)
前半の怪奇趣味的謎の配置と盛り上がりは面白かったのですが、盛り上げ方に比べてオチが「いや、もっと何かあるでしょう」と言いたくなる仕上がりでした。
あと、本作はスパイ物の要素を取り入れています。イアン・フレミングのジェームズ・ボンドの小説が1953年から、映画が62年から、それぞれほぼ毎年のようにリリースされていますが、本作の発表は63年なので、なんらかの影響があったのではないかと考えられます。
餅は餅屋だなと思わせる作品です。
有名なのでやっぱり面白いクリスティ4選 まとめ
有名なのでやっぱり面白いクリスティ4選、いかがでしたでしょうか?
本作は映画化などもされている有名作、ミステリーファンの中でも評価の高い4作にしぼってみました。
まだクリスティのこれら名作を読んでない方は是非読むことをおススメします。
これら有名作を読んでしまって、次に何を読もうかと思っていらっしゃる方向けに、あまりタイトルが知られてないけど面白い5作を紹介していますので、こちらもどうぞ。

限られた時間の中で読める、より素晴らしい本との出会いの手助けになりますように!
コメント
[…] も、何か書くとネタバレになりそうなので書きませんが、予想を完全に覆すトリックや犯人は、やはり有名であるだけあって、一読の価値はあります。(これら有名作品の感想はこちら) […]
[…] 昔、クリスティの傑作4選でも紹介したことがありますが、今回はもう少し濃く紹介します。 […]