【3分で分かる名作漫画】日出処の天子 ツッコミどころ

マンガ

昨日の記事でも紹介した通り、山岸凉子の「日出処の天子」は40年近い時を経て色あせない、不朽の名作と言って良い作品だと思います。

 

個人的にもかなり印象が強いので、昨日書ききれなかった、「とは言え気になるところ」を紹介したいと思います。

 

一部ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

ヒロインに魅力がない

 

「日出処の天子」は主人公二人の同性愛物(詳細省略)なので、「じゃぁ、ヒロインて誰やねん」と思いますが、まぁ、たぶん、毛人(えみし)の相手の布都姫(ふつひめ)ということになると思います。

 

そもそも布都姫の登場は、毛人が一目見て心奪われ、結果として厩戸(うまやど)から乗り換えたという構図になっている時点で、読者目線はかなりハードルの高いものになっているわけですが、これまた、女として全く魅力がないという、読者的に全くもって受け入れがたいキャラクターになっています。

 

あの完璧超人 厩戸から乗り換えた時点で、読者としては相当の相手を期待するわけですが、ホント、なんで作者はヒロインをこんな女にしちゃったんでしょうか?

本編中に布都姫に会いにいった厩戸が、「あんな 何の力もない女のどこが…(いいのだ)!」と走り去る場面がありますが、全くもってその通り。毛人の趣味が全く分かりません。

 

布都姫、本編中では意外とかわいそうな役回りで、幼い頃に親から引き離されて斎宮になり、親の死に目も知らされず、物部が滅んで石上斎宮が寂れた後は親族を頼るも厄介者扱いされ、気になる男が出来たと思えば物部を滅ぼした蘇我氏の男(毛人)で、斎宮として25年前後生きてきたはずなのに斎宮として無能の烙印を押され、還俗させられたかと思えば気持ち悪い大王に嫁がされ、唯一の味方だった老婆も自分をかばって殺され、毛人と最後結ばれるも子供を残して死んでしまうと、こうやって書いてるとかなり波乱万丈な人生を送っているな、という気がします。

 

なのに、全く同情する気が起きないのはなんででしょうか?

 

理由は明快で、全てに受け身で何もしないくせに、プライドだけは高いからです。

石上斎宮の復興を目指すと言いながらも自分では何も動かず、毛人と出会ったときも、暴漢に襲われて毛人が助けに来たのをホッとしていたくせに、お礼は言わないという礼儀知らずです。大王に嫁ぐ前、毛人と逢引をしようとする大胆さを見せますが、言い出したのもお膳立てをしたのも全て侍女で、本人はやっぱり受け身、敵わぬとなると神のせいにする他力本願ぶりを発揮します。気持ち悪い大王に嫁がされたときも、自分は斎宮としても無能なのだから、せめて物部の復興のためにと納得して嫁いだはずなのに、大王に対しては抵抗もしないけど何も反応しないなど、消極的に耐え忍ぶだけの存在です。

 

「何もできない」「受け身」「苦境はただ耐えるのみ」「プライドは高い」と、少女漫画の中で、女が嫌いな要素を全て合わせもっており、ホント、なんでこんな人をヒロインにしちゃったんでしょうか(2回目)。

 

そもそも女性陣にあまり魅力がない

 

この漫画は、女性と見まごう美しさ、女性のように嫉妬に駆られる厩戸が主人公の一人である時点で、女性的役割をほぼ厩戸が担っており、それ以外の女性はすべて刺身のツマ的趣があります。

 

パートナーが浮気をした場合、男性はパートナーに怒りを感じるのに対し、女性は浮気相手に怒りを感じると言います。

厩戸も、毛人ではなく、布都姫や刀自古(とじこ)に嫉妬していたところは、定石通りの女性的反応と言えます。同じようなパターンに「BANANA FISH」の月龍がいます。そういえば髪の流れ方も似ています。

 

厩戸の周りの女性としては、額田部女王(ぬかたべのひめみこ)、その娘で妻である大姫、もう一人の妻である刀自古、狂女だが妻にした膳美郎女(かしわでのみのいらつめ)、全ての元凶である母の穴穂部間人媛(あなほべのはしひとひめ)などがいます。

 

いずれも布都姫ほどツッコミどころがある人はいないのですが、膳美郎女以外は全員美人という設定ですが、誰と比べても厩戸の方が美人なので、設定が霞んだ感はあります。

 

この中では、やはり母の穴穂部間人媛が問題でしょうか。

本来であれば、厩戸のような誰よりも自慢できる息子を持ちながら、息子を恐れて遠ざけたというところは厩戸の心の闇となっており、「なんでそんな扱いするの!?」と思った人は多いでしょう。

ここは「私だったらそんな想いをさせないのに!」と、少女漫画で読者の妄想と母性本能をくすぐるところです。

まぁ、お母さんが怖いって言うんだから、仕方ないですね、ハイ。

 

厩戸の二番目の妻刀自古は、策略の上、同母兄毛人の子を妊娠すると、今度は厩戸の子供として育てるべく画策します。しかし、厩戸に全てを知られてしまい、蘇我の後ろ盾が欲しい厩戸に形だけの妻になることを了承させられます。続編「馬屋古女王」を読むと、刀自古は実際に外で不義密通を重ね、さらに3人の子供を生んだビッチとなっていたようです。

兄に見放され、夫には相手にされない寂しさからそういうことになったのでしょうが、自滅型のこのポジションも女性読者からはなかなか支持されないところです。

 

唯一、厩戸の最初の妻大姫は、口では気のない素振りをしながら、そわそわしながら厩戸と会うときの化粧や服装を気を遣うという、ツンデレの走りのようなかわいらしさを備えています。

ただ、この姫は、本編では描かれませんが、史実では結婚後時を経ずして亡くなったようで、だとすると、このかわいらしさも厩戸に理解される前に亡くなってしまったのかも知れません。

 

24年組は、萩尾望都や竹宮恵子もそうですが、少年を描かせた方が魅力的な作品が多く、山岸凉子もその流れを汲んでいるということなのかも知れません。

 

まぁ、そもそも論として、創作物で作者の描く異性はファンタジーという真理があるため、その分、女性が描く男性は女性にとって、男性が描く女性は男性にとって、それぞれ魅力的になるということかも知れません。

なお、「創作物で作者の描く異性はファンタジー」というのは、個人的には北方水滸伝を読んだときに一番思いました。

 

そう考えると布都姫も少年漫画ではうけるかも知れません。

「(何もできない)→自分を頼ってくるはかなげな女」「(受け身)→何でもいうことを聞いてくれる女」「(苦境はただ耐えるのみ)→忍耐強く我慢してくれる女」「(プライドは高い)→それでいて誇り高い女」

 

物の見方は色々ということですね。

 

「日出処の天子」ツッコミどころ まとめ

 

昨日の記事で色々言いたいことが言いきれてなかったなと思ったので、主にツッコミどころに絞って追記しましたが、いかがでしたでしょうか?

 

個人的には、布都姫が嫌いな以外は、大好きな作品ですので、ぜひ読んで頂きたいです。

 

Kindle出たら買いなおすんだけどなぁ。。。

 

 

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