これが流行ったのが私が小学校だか中学校だか覚えていないのですが、篠原千絵の本作と一つ前の『闇のパープルアイ』は一時期、私の周りではめちゃくちゃ流行ってました。
ちょっとホラーチックな作風が怖くて、ホラー嫌いな私は、読み始めたのはだいぶ後発組だったのですが、読み始めたら止まらなくなったのを覚えています。
ただ、本作も月刊誌掲載で18巻と結構連載が長かったので、実は、最終回を雑誌で見た覚えがありません。
今日は『海の闇、月の影』の最終回を振り返ってみたいと思います。
以下、ネタバレ、結末を含みますのでご注意ください。
『海の闇、月の影』あらすじ
流風と流水は一卵性の双子。同じ男性克之に恋をするが、選ばれたのは流風のほうだった。そんな時、陸上部のハイキングで、古墳のガスを吸った部員が全員死亡するという事件が起こる。奇跡的に助かった二人だが、それ以来流水の行動がおかしくなり…!!
(Amazon作品紹介より)
上記は1巻の作品紹介ですが、この後、双子が古墳で古代の未知のウィルスに感染したことが分かり、それぞれの血によって、流水は他人を感染させ操ることが出来、流風はそれに対する免疫抗体を持つようになります。
失恋の悲しみと嫉妬で、世界中の人を操り、克之を手に入れようとする流水と、それを止めようとする流風の闘いが始まる―――――――――という話でした。
衝撃の最終回
最終回は、まぁ、双子ものあるあるというか、あまりびっくりする結末ではありません。
双子の能力を利用して世界を征服しようとする天才科学者ジーンと共闘したり、敵対したり、そのジーンが残した処方箋を巡って流風と流水が他の能力者とのバトルを繰り広げたりしますが、最後は、流風と流水の一騎打ちになります。
この闘いで、流水はジーンの血を使って、流風以上の能力を手にいれますが、能力が強くなった分、皆既月食の影響を強く受け、流風より先に能力が消えてしまい、流風の手によって胸を貫かれて致命傷を負います。
最期は、流風の手によってとどめを刺されることを望み、「あんたと双子で結構楽しめたよ」という言葉を残して、流水は死んでいきました。
途中までの盛り上げがめちゃくちゃ上手かったわりに、最後はわりと無難にまとめてきたのが物足りなさも残りますが、まぁ、こういう話だとこれ以外にまとめようもないのかなという気もするため、意外性のある名作とまでは言いませんが、良作だと思います。
『海の闇、月の影』その他のみどころ
双子の描き分け
この作品は特性上、双子が何人か出てきますが、顔を描き分けるというよりは、性格の違いを際立たせ、性格にあった表情をさせることで双子を描き分けていることが多いです。
正直、篠原千絵の絵は、髪型だけ変えたら、そのまま他の漫画のキャラになるくらい、絵だけ見たら描き分けが出来てない絵だと思うのですが、作品中、「どっちが流風でどっちが流水だっけ?」となることはありません。
この辺の上手さはベテラン作家ならではの力量だなと思います。
克之の好みが謎
物語中、ある意味、一番の元凶と言っても良い人物がこの克之です。
流風と流水、双子の両方から好意を持たれていた中、流風を選び、嫉妬に苦しんだ流水とは道を違える原因を作ってしまいます。
まぁ、この辺は個人の自由なので仕方ないとしても、克之がなぜ流風を選んだのかが本編中では全く語られないため、読者が流風に感情移入できない原因を作っています。
実際、うろ覚えですが、雑誌連載時に人気投票のようなものがあり、流水の方がダントツに人気が高かった記憶があります。
流風が「いい子ちゃん」な性格であり、女に嫌われる女の要素を持っていたこと、物語が進むにつれて流水の悲劇性が深まって同情した読者も多かった点も大きいでしょう。
実際、壁ドンされてうろたえるだけの流風より、照れながらもしっかり答えそうな流水の方がツンデレでかわいいと思うのですが、克之の好みが従順そうな女子だったということでしょうか。
この辺も少女漫画の読者にはあまり好かれない要素です。
人死に過ぎ
この作品、少女漫画とは思えないくらい、びっくりするくらいたくさんの人が死にます。
まぁ、殺してるのは大半が流水なのですが、克之や流風・流水の家族、ジーン、ジーンが処方箋を預けた人たち、など、中ボスを倒していくRPG並みの密度で人が死んでいきます。
ジーンのやる気を見せるために殺された医者とかかわいそうですし、ジーンから処方箋を預かったばかりに殺された人たちもかわいそうですね。
関係者がこんなに殺されてたら、本編終了後、感染から戻ったとしても、家族関係がギクシャクして仕方なかったと思うのですが、どうなんでしょうか?
本編後は克之と流風が別れてもおかしくないくらいのダメージがあった話もあると思うのですが、、、
最近の篠原千絵先生
作者の篠原千絵は、本作前に『闇のパープル・アイ』というヒット作を、本作後にも『天は赤い河のほとり』という超大作にしてヒット作を生み出していますが、どれもそれなりにクオリティがあり、読めばそれなりに楽しめる作品が多い印象です。
ただし、『陵子の心霊事件簿』だけは唐突な設定公開と共に話が完結し、「(不定期連載なのに)打ち切りか?」と思わざるを得ませんでした。真相は知りませんが、途中までの盛り上がりが面白かっただけに、この雑な畳み方は残念でした。
『闇のパープル・アイ』時代から、元々ホラー&ミステリー調の作品が多かった印象ですが、『天は赤い河のほとり』は、これまでとは全く違う主人公タイムスリップ歴史もので、史実を踏まえた上での作者なりのアレンジが面白く、「歴史物もいけるやん!」と思わせた作品でした。
そんな篠原千絵も『天は赤い河のほとり』以降、歴史物にはまったらしく、現在は『夢の雫、黄金の鳥籠』を連載中です。
オスマン帝国最盛期を治めたスレイマン大帝の妃ヒュッレムを描いた作品で、『天は赤い河のほとり』よりさらに歴史漫画に寄せた話となっており、歴史が好きな人には特にはまりそうな作品です。
『海の闇、月の影』最終回 まとめ
篠原千絵の『海の闇、月の影』いかがでしたでしょうか?
今読んでも流風のいいこちゃんぶりにはイラッとするのですが、話のテンポも展開も速いし、登場人物の出し方も分かり易くて、今読んでも面白いです。
さすがに絵柄は古さを感じさせますが、線がすっきりしている上に、人体の動きの画力が高いので、読んでいるうちに慣れます。
久々に篠原千絵、全巻読み返そうかなぁ。。。
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