先日、某日本企業にお邪魔した際、出回っていた稟議書の表紙を見る機会がありました。
それを見ると、ハンコ、もしくは、サインをするための大量の四角が。
その内容がたまたま重要な内容だったのかも知れませんが、課長から始まり、部長、執行役員、社長と12個くらいハンコを押す四角があり、未だにこういうものがあるんだなーと、ちょっと面白く思ってしまいました。
今日は日本企業の承認文化について思うところを書いていきたいと思います。
私が経験した外資系企業の承認スタイル
私自身は外資系企業でしか働いたことがないので、社内でそういうハンコいっぱいの稟議書のようなものは見たことがありません。
ビジネス上の承認は全てワークフローで流すことになっていて、ワークフロー上の承認者は最大でも3人、金額の大きな提案など詳細の説明が必要な場合は、関係者を一堂(テレカン含む)に集めて説明、その場で承認をもらうスタイルです。
身上異動届もワークフロー、必要な書類は人事に直接提出します。
上司は人事が反映した結果を参照することは可能です。
もちろん、一緒に働く人間の心理として、直属の上司やチームメンバーに身上の変更があれば、一言言っておくというのはありますが、基本的に情報共有のレベルにとどまります。
日本企業の身上異動届
昔、とある外資系企業にお邪魔したときでした。
外資系企業と言っても、元はバリバリのドメスティックな日本企業。それが、ある日、外資系企業に買収されて、突然外資系企業になったパターンです。
なので、今はその後変わったのかも知れませんが、当時の社内プロセスはそれまでの日本企業のプロセスが残っていました。
ある日、クライアントの日本人の一人が、直属上司のアメリカ人に身上異動届の承認をもらおうとして、話が盛り上がっていました。
何かと思えば、アメリカ人上司の言い分は、
「なんで、僕が君の離婚を承認しないといけないんだ」
「僕が却下したら、君は離婚を考え直すのか」
というものでした。
。。。。。ごもっとも。
この件は、その後、どうしたのかは知らないのですが、離婚を承認しろと言われても困るだろうなーと思いました。
人事に提出だけすれば良いんじゃないかと思うのですが、なぜ直属上司の承認が必要になるのかは謎です。
仮に、実は後で離婚していなかったことが発覚した、なんてことがあっても、上司としても、責められても調べようがないでしょうし、責任を問われても困るでしょう。
日本企業の承認文化に対する改善提案2点
この謎のプロセスが未だにその会社にあるのかどうかは分からないのですが、この謎の承認文化については、二つの問題点があると思っています。
一つは、責任の所在があいまいになること。
一つの稟議書を何人もの人がサインした結果、誰がどこまでの責任を負うのか、サインした人は分かっているのでしょうか?
一人サインする人が増えるごとに、責任の所在が薄まっていくような感じがします。
もちろん、調和を重んじる日本企業の傾向として、全関係者のコンセンサスを取りたいというのは分かりますが、関係者が増えれば増えるほど時間がかかり、決断が遅くなりますし、不祥事やトラブルが起きたとき、必ず誰かが責任を取るのだから、責任を取るラインにいる人だけが承認し、それ以外の人には情報共有に留めたら良いんじゃないかと思うのですが、ダメなんでしょうか?
もう一つは、様式美のために時間を取られていること。
先ほどの離婚の身上異動届の承認の例がそうですが、上司に責任の取りようがないことを承認させるのは、日本企業のただの様式美でしかありません。
離婚することで仕事に影響が出るというならともかく、そうでなければ、手当等の手続きを進めてもらうために人事に報告だけすれば良い話で、本来、別に上司に報告すらしなくても良い話だと思います。
そういうことのために、忙しい上司の時間を取るというのは、全く持って無駄な話だと思います。
決して外資系企業がパーフェクトな会社だとは言いませんが、この点に関しては、無駄を省き、責任の所在を明らかにするという意味で、一日の長があると思います。
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