海外生活が長くなると、大体のことは現地に慣れ、諦めが良くなり、大体のことは許せるようになってきます。
そんな状態で久しぶりに日本に帰ると、日本の便利さに驚愕することもしばしば。
何が便利って、なにより「Amazon最強!」というオチですが、こんなになんでも買えるAmazonという場もすごいですが、それらが正確に時間通りにお手元に届く、日本の物流もすごいです。
日本の物流についてはもう限界だー!という話がありましたが、それについて今は語るつもりはありません。
ただ、シンガポールに住んでいたときは、郵便局に再配達の仕組みがない上に窓口受取が非常にめんどくさかったり、そもそも日本から送ったものの4件に1件くらいしか届かなかったり、タイに送った郵便物が間違いで台湾に送られたり、と先進国とはとても思えない対応だったことを考えると、日本は勤勉だなぁと思います。
ま、シンガポールもダメなのは郵便局だけで、DHLなどは素晴らしいサービスですので、単純比較はできないですが。
で、今日書きたいのは物流の話ではなく、銀行の話です。
こんな便利な国日本で、私がサービスに納得いかないものの筆頭が銀行です。
というわけで、日本の銀行このままで大丈夫なの?と思う点を羅列していきます。
なぜ日本の銀行窓口は15時までなのか
私が日本の銀行で一番納得いかないのはこの点です。
一応、銀行法にはこのような↓記載があるため、元々平日15時までが主流でした。
銀行法(昭和五十六年六月一日法律第五十九号)
(休日及び営業時間)
第十五条 銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る。
2 銀行の営業時間は、金融取引の状況等を勘案して内閣府令で定める。第十六条 銀行の営業時間は、午前九時から午後三時までとする。
2 前項の営業時間は、営業の都合により延長することができる。
しかしながら、銀行の都合により延長もでき、土日営業もできるとしているのに、未だに踏襲している理由が分かりませんね。
思うに、銀行法が出来た時代は、高度成長期の企業戦士+専業主婦という夫婦構成を想定していたのではないかと思われます。
専業主婦であれば、15時までに銀行に行く時間を捻出することは難しくないでしょう。
しかし、共働きが珍しくないこの現代において、15時までに銀行に行こうとすると、仕事を抜け出すか昼休みに寄るかしかなく、おかげで昼休みの丸の内近辺の銀行では大行列ができるわけです。
自社ビル内で大行列作ってるのに疑問に思わないんですかね>三〇UF〇銀行さん!
と思いますが、人間は見たいものしか見えないのはカエサルの時代からの真実ですので仕方ありません。
しかしながら、人生イージーモードの紐気質の人が多いタイでさえ、繁華街やショッピングモールの銀行は土日も夜まで窓口を開けるなど、客の側から見れば、よっぽど働いています。
おかげでこちらは平日に抜け出して、なんてことをしなくて便利。土日に悠々払い込みに行けます。
よく、日本の銀行は15時の閉店後が本番なんて言い、ずっと照合作業をしているそうですが、これはタイでも同じだと思います。
タイ人よりよっぽど勤勉な日本人がなぜ15時以降も窓口を開けておけないのか、よっぽど上司がポンコツなのか、システムがポンコツなのか、プロセスに無駄が多いのか、その全部なのかのどれかだと思います。
なお、最近は、一部15時以降や土曜日も営業している銀行もありますので、少しずつですが、変わってきてはいるようです。
なぜ日本の銀行は自分の預金を引き下ろすのに手数料がかかるのか
普通預金の金利は0.001%で、100万円1年預けて10円にしかならないのに、時間外に自分のお金を引き出すだけで108円かかります。
預けておいたお金を出そうとしただけなのに、堂々と宣言した上で目の前でお金を減らしていく。
ボトル預けてたらお店の人に勝手に飲まれて減ってた、ってことでしょうか。いや、ホント、どこのぼったくりバーですか、と思います。
この点については、2013年に放送作家の山名宏和氏がみずほ銀行に直撃しており、その回答が有名なので引用します。
担当者 ATMの手数料について質問との事ですが、そうですね、まず時間なのですが、通常8時45分から18時までは手数料かからないのですが、これはですね、銀行の昔からの営業の時間が影響しておりまして。その時間までは無料なのですが、それ以外の時間に関しては実はコストの方がかかっておりまして、その部分をお客さんにご負担頂くという形になっています。
ーーどういうコストがかかっているんですか?
担当者 お客様にご迷惑をおかけしないように、いろいろなところで行員が待機していますから、それをお客様に一部負担して頂くという形です。コンビニなども、設置のコストですとか、セキュリティのことだったりとか。各銀行ともにそうなっております。
ーー他の銀行からおろすならともかく、自分の銀行からお金をおろすのにも手数料がかかるのは、どうかって思うんですけど。
担当者 ATMが出来た頃というのは、平日の8時45分からしか、使えなかったんですね、シャッターすら開かずに。で、18時で終わっていたんです。そこから、だんだんお客様のご要望の声によって、順次利用可能時間を拡大していって、それだけのコストがかかっているということですね。
これを読むと、18時までの人件費はかかってない、という不思議な文章に読めるのですが、まぁ、言っていることを鵜呑みにして、普通の考えにうがった見方を加えると、18時までの人件費は過去の経緯上、通常のP&Lでコストに既に入ってるからその収支の中でうやむやにできるけど、営業時間拡大後の人件費はP&Lの中に入ってないからどこかに負担させよう、丁度いいから手数料にしちゃえってことですかね。
私はタイとシンガポールで働いた経験があり、どちらの国でも銀行口座を持っていたことがあるのですが、どちらも曜日・時間に関わらず、自分のお金を引き出すのに手数料はかかりません。
シンガポールは銀行によっては口座維持手数料がかかるところもあります。
お金預かって口座維持するのに手数料かかるんだからと言われると、確かにそうでしょうね、と言いたくなる説得力があります。
手数料無料を呼び水にお客さんを増やそうとしたり、かと思うと、いつの間にか手数料値上げしてネット民にたたかれたりと、日本の銀行の手数料ビジネスは、他にビジネスやるセンスがないからこういうビジネスモデル取ってるのかなと思ったりします。
なぜ日本の銀行は偽造しやすいハンコを未だに使っているのか
これについては、実は私も日本にいたときはそういうものだとしか思っていなかったのですが、よく考えると不思議な文化です。
ハンコなんて、今時100円ショップでも買えるもの。ダイソーのハンコを銀行印なんかにしないよ、という声が聞こえそうですが、私の周りには結構います。100円銀行印。
しかも、ハンコ屋に押印を持って行けば、ハンコの本体を真似て作ってくれる、こんな偽造しやすいものを、なぜ大事なお金を預ける銀行が未だに後生大事に要求するのか、私には全く理解できません。
そもそも日本最古のハンコは「漢委奴国王印」と言い、、、、という、日本のハンコ社会に対するボケは別の機会に毒づきたいので止めておきますが、長く文化として培われたものはなかなか廃れない、ということでしょうか。
なお、2016年にりそな銀が3年以内にハンコが必要な手続きを撤廃すると発表していましたが、その後、順調に進んでいるんでしょうか?
りそなに口座持ってないので知らないのですが。
言うまでもないことですが、シンガポールでもタイでも、ハンコの代わりに使われているのは、自筆の署名です。偽造のしづらさでいったら、断然こちらの方が上ですね。
「ハンコ忘れた!」という事態が絶対に起こらないので、ぜひ他の日本の銀行でもさっさと撤廃して欲しいものだと思います。
なお、今後は、電子署名などのデジタル方面に当然シフトしていくと思われるので、その対応も忘れないで頂きたいです。
なぜ日本の銀行の金利はこんなに低いのか
これについては解説も考察も必要ないのではないかと思いますが、ようするに日本はゼロ金利どころかマイナス金利と言われ、銀行にお金を預けているだけでは全くお金が増えないようになっています。
マイナス金利という名前だけ見ると、お金を預けておくと逆にお金を取られるということになり、「あ、だから、手数料ってそういう設定になっているのか」と妙に納得したくなりますが、別にお金を取られるわけではありません。
「じゃぁ、手数料ってなんなのさ」と言いたくなりますが、この話、しつこいですかね。やめておきます。
強引に話を戻すと、日本では普通預金の金利は0.001%で、100万円1年預けて10円にしかなりません。20%の税引き後は8円です。
一方シンガポールでは、諸条件によって金利が変わるので幅がありますが、大手銀行で現実的なところでは、1.0~1.88%の範囲で落ち着くところかと思います。
かつ、シンガポールでは金利に税金がかからない、というすばらしい条件があり、ついた分がそのまま受け取れます。
タイでは0.3~0.5%(普通預金)、1.0~2.0%(定期預金)の設定のところが多いようです。
こちらは税金15%がかかります。
いずれにせよ、くらべものにならない低金利。
キャリートレードという言葉を知らなくても、日本でお金を借りて、海外で運用したら、利益が出るんじゃないかということに気づくと思います。
海外にいると全く名前を聞かない日本の銀行
以上は私が日本の銀行について常々不満に思っている点を羅列しました。
加えて、一番気になる点としては、海外にいると、日本人のメンタリティとして、どうしても日系企業の活躍に目が行きがちになるのですが、日本の製造業はそれなりに名前を聞きますが、日本の銀行は全く存在感がありません。
シンガポールの3大銀行(DBS、OCBC、UOB)はいずれも東南アジア全域を含む広範な国々で活動しており、華僑マネーの強みがあるとは言え、存在感が違います。
金融立国シンガポールの銀行と比べてはという意見もあるかと思いますが、日本の銀行も、赤い銀行は昔から海外の事業展開を積極的に進めてきており、緑の銀行も最近になって主にアジアへの投資を増やしてきており、日本に限らない土壌で闘う気はあるように見えます。
青い銀行だけはIT界のサクラダファミリアと別名されるシステム統合に振り回され(ているのが原因かどうかは分かりませんが)、今一つグローバル展開まで追いついていないようです。
銀行というのは国の経済の根幹をなす存在であるため、そもそも各国で規制が入りがちであり、国としても自国内の銀行は守る方向に動きがちです。
それが悪いという気はなく、むしろ国家として当然のことだと思います。
日本の場合の問題は、2017年3月にも1,000兆円を突破した預金残高が象徴するように、世界でも有数の巨額の国内預金を背景に、長らく外に目を向けなくてもやっていけた、という点にあるでしょう。
同じようなケースは携帯電話があり、通信もまた国の規制が入りやすい事業であるという点も共通しています。
日本の携帯電話は、1億3000万人の日本人という、そこそこの規模の市場のみを相手に独自の進化を遂げた結果、彗星のごとく現れたiPhoneとそれに続く各種スマートフォンにあっという間にグローバル規模で市場を席捲され、日本のメーカーはことごとく消えていきました。
消えたのはメーカーで、通信企業は消えてないという向きもあるかと思いますが、通信が現地での大規模な設備投資を必要とする以上、それは当たり前で、むしろ、日本で独自進化を遂げていたサービスをグローバルに展開する動きがあったなら、今頃は日本発のサービスがグローバルスタンダードになっていたかも知れません。
日本人はVHS・ベータ戦争から何も学んでいないのです。
銀行も日本の巨大な国内預金のみを相手に独自のビジネスを続けていた結果、いつの間にかグローバルで闘えなくなり、日本の市場規模縮小と共にビジネスも縮小という事態になりそうな気配があります。
日本の銀行サービスは既に出遅れた感があり、だからこそ、最近の赤と緑の銀行がアジアでの投資を積極化しているのだと思いますが、投資をして追いつくだけでなく、自分たちのサービスをグローバルスタンダードにする、くらいの意気込みでやって欲しいなぁと思うわけです。
ガラパゴス化する日本の銀行 まとめ
最初は銀行のサービスに毒づきたかっただけなのですが、だいぶ内容が逸れてしまいました。
でも、海外にいると、現地で日本の企業の名前を聞いたり、日本の企業が頑張っている話を聞くとやっぱりうれしい、というのはあります。
シンガポールや香港の金融界の猛者を相手にするのは並みのことではないでしょうが、日本の銀行にも頑張って欲しいなぁと思う次第です。
コメント
[…] 昨日の銀行のガラパゴス化でも触れましたが、偽造しやすいハンコが、日本の銀行で必須アイテムになる理由が私には分かりません。 […]