普段、推理小説を読まない人でも、アガサ・クリスティの名前を聞いたことがない人はいないでしょう。
イギリスが生んだ「ミステリーの女王」。
その著作は、長編66作、中短編156作と多作で、1920年のデビューから100年近く経った今でも、ほとんどの作品が未だに世界中で読まれ、時には映画化し、全世界の発行部数は10億部を超えるという驚異的なベストセラー作家です。
一般に、特に有名なのは、「そして誰もいなくなった」「オリエント急行の殺人」「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」の4作でしょうか。
どれも、何か書くとネタバレになりそうなので書きませんが、予想を完全に覆すトリックや犯人は、やはり有名であるだけあって、一読の価値はあります。(これら有名作品の感想はこちら)
実は上に挙げた4作のうち、「そして誰もいなくなった」を除く3作が全て探偵ポアロを主人公とするポアロシリーズの作品だということをご存知でしたでしょうか?
クリスティの中でもポアロシリーズは名作が多いです。
ポアロシリーズはイギリスのITVが俳優デヴィット・スーシェを起用したテレビドラマが有名で、日本でもNHKで放映されていましたので、そちらでご存知の方も多いかも知れません。
そんなポアロシリーズを、長編・短編含めて最近やっと全て読破しました。折角なので、上記に挙げた有名作を除き、個人的に地味だけど名作だと思った5作について紹介したいと思います。
5匹の豚
16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです……娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは? (作品紹介より)
あらすじにある通り、16年前の殺人事件の真相解明を依頼されたポアロが、当時の関係者に話を聞いて回ることになります。
一見、全員の説明が例外なく同じ人物を指しているように見える中、ポアロはちょっとした言い回しの違いや、心理的に考えておかしいと思われる状況から小さな矛盾点を洗い出し、16年を経て、ついに真犯人に迫る、という話です。
読み返すと、真犯人に至るネタは随所に仕込まれているのに私は全く分かりませんでした。
有名な諸作品がどちらかというと実験的要素が多い中、この作品はミステリーの王道中の王道の犯人中て。間違いなく、これは傑作だと思います。
葬儀を終えて
リチャードは殺されたんじゃなかったの――アバネシー家の当主リチャードの葬儀が終わり、その遺言公開の席上、末の妹のコーラが口にした言葉。すべてはその一言がきっかけだった。 翌日、コーラが惨殺死体で発見される。要請を受けて調査に乗り出したポアロが一族の葛藤の中に見たものとは? (作品紹介より)
これも気持ちよく騙された作品の一つです。派手さや奇をてらったところは一切なく、正統派ミステリーとして、かなり完成度の高い部類に入るんじゃないかと思います。
種明かしをされてみれば、確かに手がかりは最初から大量に提示されているのですが、どれかに気づいても良さそうなものですが、ポアロが説明してくれるまで私には分かりませんでした。
これ、なんと、ポアロの25作目。25作もあって、パターン化せずにこれだけ完成度の高い傑作があったというのに驚きです。
白昼の悪魔
地中海の避暑地の島の静寂が破られた。島に滞在中の美しき元女優が、何者かに殺害されたのだ。犯人が滞在客の中にいることは間違いない。だが関係者には、いずれも鉄壁とも思えるアリバイが……難航する捜査がついに暗礁に乗り上げたとき、滞在客の中からエルキュール・ポアロが進みでた! (作品紹介より)
作品紹介にある通り、女優が殺され、疑わしい人たちの鉄壁のアリバイを崩していきます。
登場人物の性格付けと心理描写がよくできた作品です。最初と最後で主要登場人物の印象がガラッと変わります。確かにヒントはあったのですが、違和感はありつつも、ストーリーには結びつきませんでした。あまり書くとネタバレになりそうなのでかけません。
邪悪の家
名探偵ポアロは保養地のホテルで、若き美女ニックと出会った。近くに建つエンド・ハウスの所有者である彼女は、最近三回も命の危険にさらされたとポアロに語る。まさにその会話の最中、一発の銃弾が……ニックを守るべく屋敷に赴いたポアロだが、五里霧中のまま、ついにある夜惨劇は起きてしまった! (作品紹介より)
意外な犯人です。これもまた、最初から何か変だという違和感を抱かせつつ、それでもやっぱり最後には騙されてしまいました。ポアロもかなり後の方まで騙されていたという体にして、ポアロやヘイスティングスまでミスリードに使うという上手さです。
ITVのドラマシリーズのファンにとっては、ポアロとヘイスティングス、ジャップ警部の気の置けないやりとりが楽しい作品です。
スタイルズ荘の怪事件
旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。調査に乗り出すのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命したエルキュール・ポアロだった。不朽の名探偵の出発点となった著者の記念すべきデビュー作 (作品紹介より)
これが1920年、今から100年近く前に書かれた、衝撃のデビュー作です。
正直、この後に世に出てくる名作に比べると、この作品は佳作という感じなのですが、怪しそうな人々、怪しい行動、登場人物間の関係と愛情のもつれの全てをヒントかつミスリードに使って、最後に以外な真相を明かす、という型が既に出来ています。
ポアロ最後の作品「カーテン」もスタイルズ荘を舞台にしているということもあり、本作に思い入れのあるポアロファンも多いことと思います。
地味に面白いポアロ5選 まとめ
ポアロおススメ5選、いかがでしたでしょうか?
映画などでも有名な作品は外し、あまり知られてないけれど、個人的に面白いと思った作品ばかりを選んでみました。
クリスティの有名作を読んでしまって、次何を読もうと思っていらっしゃる方におススメです。
時間は有限!限られた時間の中で読めるより素晴らしい本との出会いの手助けになりますように。
有名作品の感想もこちらに書きました

コメント
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