巨星逝く!中国武侠小説の雄 金庸を偲んで

書評

2018年10月30日、中国の有名な作家金庸(きんよう)が亡くなりました。今日は、金庸を偲び、彼の功績と作品を振り返りたいと思います。

 

金庸ってこんな人 おさらい

 

金庸は、日本では、一部の中国小説好きにはカルト的な人気を誇っていますが、ドラマもあまり放映されない日本では、一般的にはあまり知られていないかと思います。

 

金庸は本名を査 良鏞(さ りょうよう)と言い、金庸は本名の最後の一文字「鏞」を分解した筆名です。

 

元々は外交官を目指して大学で勉学に励んでいましたが、当時の共産党思想と相いれない金庸の思想が敬遠され、外交官の道が閉ざされた金庸は、勤めていた香港の新聞会社で新聞連載の形で武侠小説を発表します。

第一作は1955年に発表した「書剣恩仇録」、その後、「鹿鼎記」に至るまで、計15作の武侠小説を発表、いずれも大人気となりました。

「鹿鼎記」は1972年に書かれた作品で、その後、金庸は断筆宣言をしたため、それ以降、新たな作品は書かれていません。

 

その過程で、本人は独立して新たな新聞社を立ち上げるなど、ビジネスマンとしても成功を治めますが、新聞社の株を売って引退しました。

そして、2018年10月30日、香港の病院で死去、享年94歳という大往生でした。

 

金庸の武侠小説の特徴

 

金庸の武侠小説の最大の功績は、それまでは大衆娯楽ものとして一段下に見られていた武侠小説を、知識人の間でも好んで読まれる文学としての立場を確立させたことにあると言われています。

 

金庸の作品は、歴史が大きく動いた時期を背景にしているものが多く、史実と想像上の人物を絡めて物語を展開していきます。また、その性質上、物語の中で、民族間の争いや葛藤が描かれることが多く、しかしながら、伝統的な中華思想に縛られない公正な描かれ方は金庸の小説の大きな特徴の一つです。

 

また、ほとんどの話の主人公が、武術に優れ、厭世的・禁欲的で義侠心に厚いものの、ちょっと思慮に欠ける、という性質を有しており、それに主人公を一途に思う、けなげで知恵のまわるヒロインが力を貸して、物語を展開していく構図が多くなっています。

 

武侠小説で描かれる武術と言うと、日本で良く知られるのは功夫(カンフー)が挙げられますが、功夫映画でイメージするような、ちょっと現実には考えられない武術が出てくることも多く、その分、アクション映像映えする作品も多いため、金庸作品は、中華圏では何度もドラマ化されています。

 

中国での受け取られ方

 

Wikiによると、「中国人がいれば、必ず金庸の小説がある」と言われているそうで、これが本当かどうかは知りませんが、私の知り合いの中国人で金庸のことを知らない人は確かにいませんでした。

私が「金庸が大好きだ」と言うと、どの作品が好きか、どのキャラが好きかでかなり盛り上がります。

 

面白いところでは、アリババの創業者ジャック・マーは金庸の大ファンで、仕事上、自らは風清揚(後述する「笑傲江湖」に出てくる主人公令狐冲の陰の師匠のような存在)と名乗り、会議室の名前を光明頂、桃花島、侠客島、聚賢庄といった、金庸作品に出てくる地名にしていたそうです。

 

最も、金庸の作品が書かれたのが、最新でも1972年と今の感覚で言うと比較的古く、実は中国人で金庸の小説原作を読んだことがある人は少数派なのではないかというのが私の印象です。

では彼らが何で知っているかと言うと、だいたいがドラマを見て知っているというケースが多いです。

 

実際、金庸の作品はほとんどの作品が複数回ドラマ化されており、美男美女が織りなす恋愛劇と、現代のワイヤー技術を駆使した武術のアクションシーンは迫力があります。

ただ、私の周りの中国人の友達は、1980年代に香港で作られたドラマシリーズが、CGやアクションの迫力は劣るものの、役者の演技力や役者間のバランスは一番良かったと口をそろえて言っていました。

最近に作られたドラマは、アイドルのような演技が初めての役者ばかりを起用しており、ビジュアル的には綺麗なものの、演技は見れたものじゃないと、どこかの国でも聞いたことがある感想を彼らは言っていました。

 

金庸が亡くなられたことで、また新たにあちこちで再ドラマ化の話が持ち上がっているようで、それらが実現し、前述の友達からおススメがあれば見てみたいと思います。

 

個人的な一番のおススメは「笑傲江湖」

 

先述の通り、金庸はその生涯で15作しか作品を発表していないのですが、その多くが長大作で、かなり読み応えがあります

 

その中で個人的なおススメは「笑傲江湖」(しょうごうこうこ)で、日本語訳版は文庫版で全7巻とかなりのボリュームですが、面白すぎて夜更かし本になること必至です。

 

この作品は私が初めて読んだ金庸作品でもあり、思い入れもあるというのもありますが、次から次へと襲い来る展開にあれよあれよと言う間に飲み込まれ、あまりに夢中になり過ぎて、電車を乗り過ごしたこともありました。

私が本に夢中になり過ぎて電車を乗り過ごしたのは、これと京極夏彦だけです。

 

内容は、武芸各派が江湖の頂点を競う中、江湖に伝わる無敵の武芸「辟邪剣譜」の秘伝書を巡り、様々な人物の思惑が入り乱れ、陰謀が張り巡らされる。「辟邪剣譜」についてあらぬ疑いをかけられた主人公の令狐冲(れいこちゅう)は、魔教日月神教の争いにも巻き込まれ、自らも死の淵に追いやられる、という話です。

 

「辟邪剣譜」の秘伝書を巡るやりとりが非常に面白く、次から次へと利害関係者が出ては消え出ては消えし、良い人だと信じていた人がとんでもない腹黒だったとか、とんでもないところでとんでもない人が裏切るとか、推理小説ではありませんが、どんでん返しの嵐で止まらなくなります

主人公令狐冲がとても性格の良いキャラに描かれているため、裏切りのシーンなどは、令狐冲と一緒に驚愕し、悲しくなってしまいます。

 

一方で、金庸お得意の男女の恋愛要素も忘れておらず、金庸の主人公はほとんどが一途と相場が決まっていますが、令狐冲も一途に一人の女を思い続けるも、色々あって任盈盈と結ばれることになります。この任盈盈がツンデレの走りのようなキャラで、とても可愛らしいのです。

 

あと、「辟邪剣譜」に書かれている、最強の武芸を習得する方法の第一歩も、冷静に考えると笑えます。現実にはものすごく強くなりたかったとしても、実際やる人はいないと思いますが、作中ではこの点がかなり長いこと引っ張られるので、分かったときは衝撃でしたが、よく考えるとやっぱり笑えると思います。

実際、何が書かれているかは、読んで確かめてみてください。

 

 

金庸を偲んで まとめ

 

簡単に金庸についてとそのおススメ作品「笑傲江湖」を見てみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

金庸が亡くなれたニュースは、私は中国人の友達からのWeChatで知りましたが、彼いわく、中国人の価値観では、「素晴らしい作品をたくさん残して、95年も長生きして亡くなられたことは、喜ぶべきこと」となるそうです。

 

私も、これ以上新作がないことが確定したことは悲しいですが、残された15作を読み返し、その素晴らしさを改めて堪能して、故人を偲びたいと思います。

 

ご冥福をお祈りいたします。深表哀悼。

 

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コメント

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